西表島
西表島は、河口部などの汽水域に発達するマングローブ林が広く分布していることも特徴

新固有種の生物が多く生息する南琉球の島

西表島は4島の中で唯一南琉球に位置する島です。現在の琉球列島は、およそ1,200万年前までユーラシア大陸とひと続きでした。200万年前ごろまでに起きた大規模な地殻変動の影響で、ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込み、現在の琉球列島西側に「沖縄トラフ」と呼ばれる海域が生まれ、徐々に大陸と切り離されました。しかし、南琉球では海面が低下する氷期、海面が上昇する間氷期が繰り返される中、大陸とつながったり離れたりを繰り返し、長い間大陸の生き物が行き来する環境となり、最終的にはその一部が現在の西表島に取り残されました。中琉球では「生きる化石」とも言える遺存固有種が多く見られるのが特徴的である一方で、南琉球に位置する西表島ではほとんどみられず、近縁種が大陸に存在するイリオモテヤマネコなど新固有種が多く生息しているのが特徴として挙げられます。

国内最大のマングローブ林

西表島の約90%は森林が占めており、4島の中で自然の植生の割合が最も高いのが特徴です。国内で最大規模のマングローブがあり、その面積は日本のマングローブの7割に当たります。400m級の山々が連なっていて渓流帯があるほか、干潟や低湿地帯などもあり、多様な生態系を支えています。また、国内で唯一、日本で生育しているマングローブの植物7種が全て分布していることでも知られています。

高い適応力で生き延びてきたイリオモテヤマネコ

イリオモテヤマネコが生息する西表島は、ヤマネコが生息する世界最小の島であり、世界遺産の4島の中で唯一食肉目が生息する島でもあります。イリオモテヤマネコは1965年に発見された大陸に由来するヤマネコで、その存在の発見が琉球列島の豊かな自然環境の保全を考えるきっかけにもなりました。元来、ネコ科の動物はネズミやウサギをエサとしますが、西表島にはそれらが生息していませんでした。そのような環境下で、イリオモテヤマネコはネコ科が苦手とする水をいやがることなく川を泳ぎ、キノボリトカゲやシロハラクイナ、ヌマガエルなど、生きるために好き嫌いをせずになんでも捕食して、たくましく生きてきました。そんなイリオモテヤマネコは島内の食物連鎖の頂点に立ちながら、新固有種で食物連鎖の頂点となるカンムリワシとは競合せずにエサを分け合って共存してきたとする研究結果も発表されています。

イリオモテヤマネコ
西表島固有種のイリオモテヤマネコ。大きさはイエネコとほぼ同じ(©Hiroyuki Kato/Adobe Stock)

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。

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