沖縄島北部
やんばる国立公園。「やんばる(山原)」は豊かな森が広がる沖縄島北部一帯を指す

山深い地形と豊富な降水量が育む渓流植生

沖縄本島最高峰の与那覇岳(標高503m)や伊湯岳(446m)などの山々がある沖縄島北部が「やんばる(山原)」です。範囲の明確な定義はないものの、国頭村、大宜味村、東村の3村を世界遺産では「やんばる3村」と呼んでいます。3つの村にまたがる「やんばる国立公園」には、国内最大級の亜熱帯雨林が広がります。飛べない鳥として知られるヤンバルクイナや沖縄県の県鳥でもあるノグチゲラのほか、遺存固有種のオキナワトゲネズミやヤンバルテナガコガネ、オキナワイシカワガエル、1996年に初めて見つかったヤンバルホオヒゲコウモリなど、希少な生物が存在します。また、与那覇岳などの斜面には豊富な降水量に裏打ちされた雲霧林が広がっています。20~30度の傾斜地が多いため、多量の雨水の流入によって川床と川岸が周期的に冠水する「渓流帯」が存在し、環境に適応した渓流植生が根を張っており、今でも新種が発見されています。

ヤンバルクイナ
ヤンバルクイナ。世界に広く分布するクイナ科に属し、沖縄島北部にのみ生息する遺存固有種(©安村直樹/Adobe Stock)
オキナワトゲネズミ
沖縄島北部の固有種、オキナワトゲネズミ。奄美大島と徳之島にも近縁の別種が生息(©M. To./Adobe Stock)

世界遺産と隣接する米軍訓練場

戦後、アメリカ軍の統治下にあった現在の沖縄県北部のやんばるの広範囲が1957年から米軍の訓練場(北部訓練場)として運用されていましたが、日米が協議を重ねてその土地の多くが返還されました。2018年には返還された土地の大部分をやんばる国立公園に指定。同年、世界遺産推薦書をいったん取り下げて国立公園とした返還跡地を盛り込んで翌2019に推薦書を再提出した経緯があります。日米間では情報共有や意見交換を進めるとともに、現場では外来種対策などの具体的な調整を行うなど、適切な保全や管理が図られています。

捕食の危険と隣り合わせの県鳥

沖縄島北部でヤンバルクイナとともにやんばるの代表格に挙げられるのが沖縄県の鳥・ノグチゲラです。やんばるだけに生息するキツツキで、全長30cmほどで赤い頭頂部が特徴で、環境省では1999年から足環を取り付けて追跡調査を行い、その行動や繁殖状況を調べています。イタジイやタブノキなどの木の高さ3~6mあたりに巣穴を掘ります。ノグチゲラが作った巣穴は、後に木の洞穴となってヤンバルコノハズクやケナガネズミなどの巣穴になっていくそうです。ノグチゲラのヒナが誕生すると、オスは地上で土の中にいるセミやクモの幼虫を、メスは木の幹にいるカミキリムシの幼虫をそれぞれ捕獲し、ヒナたちに運んで子育てをします。やんばるには肉食の哺乳類がいなかったため、地上に降りてエサを確保するようになりました。そんなノグチゲラを、マングースやノネコが襲い、沖縄で増加しているハシブトカラスはヒナを襲います。森林伐採などで生息域が狭まるなどの影響を受けながらも、ノグチゲラは懸命に生きています。

ノグチゲラ
沖縄島北部の固有種ノグチゲラ。オスは地面をくちばしで掘り、地中の昆虫などを採餌することもある(©trogon/Adobe Stock)

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。