奄美大島
世界遺産登録区域は、主に中央部から南部にかけての山域。起伏に富む山地が広がる

豊かな生態系が息づく動植物の楽園

奄美大島は、中琉球に位置する奄美群島で最大の島です。群島最高峰の湯湾岳(標高694m)に代表されるように、面積の8割以上を森林が占めています。スダジイの自然林や、カシやシイの切り株や根から新しい芽が伸びてできる萌芽林のほか、汽水域には西表島に次いで国内で2番目に広いマングローブ林があります。そのような豊かな植生に守られるように、奄美大島の固有種で、オスになることを決める「Y染色体」を持たないのにオスが誕生する哺乳類アマミトゲネズミや、「日本一美しいカエル」と称される金褐色の斑紋が目を引くアマミイシカワガエルなど、特徴的な動物が多く存在しています。また、奄美大島と徳之島の固有種の哺乳類アマミノクロウサギや、絶滅のおそれのある鳥類のルリカケスなど、遺存固有種の動植物も多く生息しています。

ルリカケス
奄美群島固有種のルリカケス。カラス科カケス属に分類される(©feathercollector/Adobe Stock)

マングースの絶滅で回復基調に転じた生態系

奄美大島では毒蛇のハブや、サトウキビを食い荒らす外来種のクマネズミの存在が人々の生活に影を落としていました。そのため、駆除の目的で投入されたのがフイリマングース。奄美大島では1979年に名瀬で30頭が放たれましたが、夜行性のハブに対して昼行性のマングースが捕食の対象としたのが、昼間は巣穴にいるアマミノクロウサギの幼獣や地表に巣を作るアマミヤマシギでした。さらに両生類や爬虫類も捕食し、マングースが個体数をどんどん増やして生息域を拡大していったのに対し、固有の生物たちは数を減らし、生息域が狭められていきました。そんな状況に危機感を抱いた島民たちによる防除活動が1990年代に始まり、2000年から本格的な防除事業が始まりました。わなによる捕獲や訓練された探索犬による捜索などで着実に個体数を減らしていき、2024年9月、マングースの根絶が宣言されました。これらの取り組みにより、アマミノクロウサギなどの動物の生息域が徐々に回復してきています。

アマミノクロウサギ
アマミノクロウサギ。奄美大島と徳之島にのみ生息する、1属1種の固有種(©KOSAC/Adobe Stock)

捨てられたネコが新たな脅威に

マングースへの対策が功を奏している一方で、新たな脅威となっているのがノネコの存在です。ノネコは、捨てられた飼い猫が野生化したネコのことで、島内ではアマミノクロウサギの幼獣を捕殺する様子や固有種をくわえる姿が確認されました。また、採取したふんからはケナガネズミやアマミトゲネズミなどの固有種の毛や骨が検出された調査結果もあります。繁殖力も高く、1日に摂取する餌の量はアマミノクロウサギ1頭分に当たる約380gと言われており、生態系のバランスを崩す新たな存在として位置づけられました。そこで、環境省と鹿児島県、島内の自治体は、ノネコの捕獲や新たなノネコを発生させないための管理計画を策定しました。生態系の回復に向けたさまざまな取り組みを進めているところです。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。