about
地域支配を支えた戦略的な城塞システム
レバノン南部に位置するアメル山の城塞群は、中世から19世紀にかけて発展したカラアト・アルシャキーフ(ボーフォート城)、カラアト・ティブニーン(トロン城)、カラアト・シャクラ(ドゥビエ城)、カラアト・デイル・キファ(マロン城)、カラアト・シャマーの5つの要塞の遺跡で構成されています(カラアトはアラビア語で「城塞」)。これらは丘陵や尾根の上に築かれており、重要な防衛拠点として機能しました。当初は監視塔や基地でしたが、やがて十字軍やイスラム諸王朝の軍事的知識・技術・概念が取り入れられ、射撃設備や城門、防御塔、貯蔵施設などを備えた複雑な城塞へと発展していきました。また、周辺地域の交通や人・物資の往来、農業を統制するネットワークとして、行政的な面も持ち合わせていました。5つの要塞群は、約1,000年にわたるレヴァント地域の軍事的、政治的、社会経済的な組織の歴史を物語っています。

武力紛争の影響を受け、世界遺産に緊急的推薦
アメル山の城塞群は、イスラエルとレバノン間の武力紛争による脅威が深刻となっています。2026年3月にイスラエルとレバノン間で戦闘が勃発すると、イスラエルはレバノン南部で激しい空爆を行い、さらに地上侵攻も開始しました。5月にはリタニ川を越えてレバノン領内の奥深くへ進軍し、リタニ渓谷を見下ろす戦略的要衝であるボーフォート城を制圧しました。構成資産の一部には被害が確認されています。こうした状況を受けて、レバノンは2026年6月下旬に緊急的登録推薦を申請し、2026年の世界遺産委員会で世界遺産登録と同時に危機遺産リストにも記載されました。
アクセス
ベイルートから車で約2時間。
執筆協力者PROFILE
東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。
≫世界遺産の執筆記事一覧
≫構成資産・みどころの執筆記事一覧
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東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。
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