リートフェルト設計のシュレーダー邸
20世紀後半の建築デザインに強い影響を与えた1件の家。現在は一般公開されており、誰でも見学できる

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : オランダ王国 所在地 : City and Province of Utrecht 分類 : 文化遺産 登録年 : 2000年 登録基準 : (i) (ii) 遺産の面積 : 0.000075㎢ 座標 : N52 5 7.2 E5 8 51.2

about

デ・ステイル運動の理想を具現化した建築

『リートフェルト設計のシュレーダー邸』は、オランダの首都アムステルダムから、南に30kmほどのユトレヒトにある一戸建ての住宅です。トゥルース・シュレーダー・シュラーダー夫人の依頼により、建築家ヘリット・トマス・リートフェルトが設計し、1924年に建設されました。この小さな邸宅は、内部空間の柔軟な配置と視覚的・形式的な特徴により、1920年代のオランダの芸術家・建築家集団「デ・ステイル」が掲げた理想を大規模に表現した最初の試みとなりました。デ・ステイルとは、造形の純粋かつ抽象表現を追求する芸術運動のことです。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間にヨーロッパで広まり、はじめは絵画、次に家具や建築へと理念を展開していきました。シュレーダー邸は、デ・ステイル運動だけでなく、近代建築運動の象徴のひとつとみなされています。

近代建築に影響を与えた柔軟な内部空間

シュレーダー邸は、生活や用途の変化に応じて内部空間を自在に変えられる、柔軟な空間構成が特徴です。可動式の間仕切りによって、ひとつの空間を複数の用途に使用することができる設計で、デザインと空間の扱い方に新しい視点を提示しました。ル・コルビュジエのサヴォワ邸や、ミース・ファン・デル・ローエのトゥーゲントハート邸といった、近代建築運動の初期を代表する建築作品とも比較されますが、建築空間の扱いと建物の機能に対する考え方において、明確な違いを示しています。シュレーダー邸では、空間を立方体という形態としてではなく、流動的で連続するものとして捉えられています。近代建築におけるデザインコンセプトを総合的に体現するもので、その視覚表現と空間構成は20世紀後半の建築設計に強い影響を与えました。

内部空間と家具が一体となったデザインと完璧な修復

シュレーダー邸は約60年間個人の邸宅として使用されたため、時代とともに用途が変化し、それに伴って内部には改修が行われてきました。1970年代から1980年代にかけて、リートフェルトの助手のベルタス・ムルダーにより1920年代当初の姿へと修復されました。特に外壁に用いられた色味の異なる灰色の調合は細心の注意を要し、リートフェルトと仕事にあたっていた塗装職人が現場で色の調合を行いました。この修復では、建物の設計コンセプトと構造の真正性を尊重することが重視され、現存するオリジナルの家具は修復された上で当時の位置に戻されました。また、失われていた家具や要素についても、記録や資料に基づいて忠実に再制作されています。内部空間と家具は不可分の関係として構想されたこの住宅は、デ・ステイル運動の理念を体現する建築作品として、現在も高い真正性を保ちながら、その価値を伝え続けています。

アクセス

アムステルダムからユトレヒトへ電車で25〜30分。ユトレヒト中央駅からは徒歩またはバスで約30分ほど。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず70カ国以上を旅するほどの旅好き。普段は上場企業の会社員として働きながらトラベルライターや小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。

遺産DATA

保有国 : オランダ王国
所在地 : City and Province of Utrecht
分類 : 文化遺産
登録年 : 2000年
登録基準 : (i) (ii)
遺産の面積 : 0.000075㎢
座標 :N52 5 7.2 E5 8 51.2

アクセス

アムステルダムからユトレヒトへ電車で25〜30分。ユトレヒト中央駅からは徒歩またはバスで約30分ほど。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず70カ国以上を旅するほどの旅好き。普段は上場企業の会社員として働きながらトラベルライターや小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。