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海岸沿いに延びる崖は、重要な化石記録
デンマークのユトランド半島北部、「リムフィヨルド」と呼ばれる海峡に面するモース島とフール島の海岸には、海岸崖が延びています。海や風の侵食によって露出した崖の表面からは、暁新世末と始新世前期(約5,600万~5,460万年前)に海底に堆積した地層と化石が見られます。この時期、「暁新世-始新世温暖化極大」(PETM)と呼ばれる急激な地球の温暖化が発生しました。地球の気温は5~8℃も上昇し、海洋の酸性化も進みました。本遺産は、白亜紀末の大量絶滅後に続く始新世において、現代の硬骨魚類の系譜へとつながる初期の生物がどのように進化し、極端な環境の変化に応答したかを示す、大規模な化石の記録となっています。

極めて良好な状態の化石が残るラーゲルシュテッテンの一例
モース島北西部のハンクリットと、フール島西部のクヌデクリントの海食崖には、急激な温暖化が進んだPETM期と、その後に続く寒冷期に生息していた多様な生物の化石が豊富に含まれています。化石は極めて精緻な状態で保存されていることから、本地域は、優れた保存状態の化石で知られるラーゲルシュテッテンの一例とされています。80種類以上の硬骨魚類をはじめとする海洋生物、植物、昆虫や鳥類などの陸上生物が確認されており、鳥類はほぼ完ぺきな骨格の標本も含まれています。特に魚類の化石は非常に保存状態が良いため、硬骨魚類のいくつかの系統の起源と進化を解き明かすための重要な史料になっています。
現代の気候変動研究に資する記録
PETMの原因は完全には解明されていないものの、大量の二酸化炭素が大気と海に放出されたことで、二酸化炭素の温室効果が生じたことがひとつの理由と考えられています。急激な気候変動は短期間のうちに地球環境を大きく変化させ、生態系にも大きな影響を与えました。始新世前期は温暖な気候が広がった時代で、こうした変化は現在の地球温暖化とも比較されます。当時の生物の適応過程を示す記録は、気候変動が生態系に与える影響を理解するための重要な手がかりとなります。本遺産は、私たちの将来の環境変化を考えるうえで重要な示唆を与える存在といえます。
アクセス
【モース島】コペンハーゲンからモース島まで、バスで約5~6時間。
【フール島】コペンハーゲンからリムフィヨルドの街・ブランデンまで、バスで5~6時間程度、その後フェリーでフール島まで4分。
執筆協力者PROFILE
東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。
≫世界遺産の執筆記事一覧
≫構成資産・みどころの執筆記事一覧
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【モース島】コペンハーゲンからモース島まで、バスで約5~6時間。
【フール島】コペンハーゲンからリムフィヨルドの街・ブランデンまで、バスで5~6時間程度、その後フェリーでフール島まで4分。
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東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。
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