ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩石群
カッパドキアの奇岩群は朝日とともに眺める気球ツアーが有名

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : トルコ共和国 分類 : 複合遺産 登録年 : 1985年 登録基準 : (i) (iii) (v) (vii) 遺産の面積 : 98.8381㎢ 座標 : N38 40 0.012 E34 51 0

about

雨風の浸食によって形成された奇岩の群れ

トルコの首都アンカラの南東にあるカッパドキアはアナトリア高原に位置し、キノコの形や尖塔形をした奇岩が立ち並び、トルコを代表する観光地の一つです。南と東にあるエルジェス山とハッサン山という3,000m級の山が約300万年前に起こした大噴火で、一帯が火山灰や溶岩に覆われました。それが長い年月を経て積み重ねられ、火山灰の層は凝灰岩に、溶岩は玄武岩となりました。もろさのある凝灰岩の層は雨風の浸食を受けて奇岩となり、削りやすさを生かし、住居や聖堂、修道院などがつくられました。

宗教弾圧や偶像崇拝否定の運動により生まれた洞窟施設

ローマによるキリスト教弾圧が始まった3世紀半ば以降、キリスト教徒が移り住みました。修道院での活動の痕跡は4世紀頃にさかのぼってみられ、後にはカイマクルやデリンクユの地下都市が形成されました。現地には36の地下都市が残っていますが、築かれた理由などはわかっていません。当地を支配していたビザンツ帝国による偶像崇拝を否定する運動「イコン破壊活動」(イコノクラスム)やトルコのイスラム教化のあおりを受け移り住んだキリスト教徒が増加するのに伴い、洞窟に聖堂や修道院がつくられていき、その数は10世紀には360にも及びました。

ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩石群
岩山に多くの洞窟聖堂や洞窟修道院が築かれた(©matiplana/AdobeStock)

ビザンチン美術の高い芸術性を伝えるフレスコ画

ギョレメ渓谷では多くのキリスト教徒が隠密生活を過ごし、約30の洞窟聖堂が現存しています。もろい地質を生かしてさまざまなフレスコ画が描かれており、カッパドキア最大規模とされる「バックルの聖堂」(トカル・キリセ)は、イエスによる奇跡やその生涯などが描かれており、貴重な青の顔料を用いた描写が随所にみられます。入口にリンゴの木があったことからそのように呼ばれ、聖堂内壁に「最後の晩餐」が描かれている「リンゴの聖堂」(エルマル・キリセ)のほか、外光が届かず光による内部の劣化がみられない「暗闇の聖堂」(カランルク・キリセ)などが保存状態よく残されています。これらは、偶像破壊がなされた後のビザンチン美術の素晴らしさを伝えています。

 

アクセス

羽田などからトルコのイスタンブールを経由し、ネヴシェヒル・カッパドキア空港へ。空港からはカッパドキア中心地へは車で約40分。シャトルバスやタクシーを利用する。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。

Properties

Göreme National Park / Göreme Tarihî Milli Parkı
トルコの首都アンカラの南東約250㎞に位置する国立公園で、約95㎢の広さを有します。アナトリア山脈と黒海、トルコの世界遺産暫定リストにも記載されている塩湖・トッズ湖に囲まれたエリアが「カッパドキア」で、キノコの形や先のとがった形などさまざまな形の奇岩の群れで有名です。岩の削りやすさを利用して洞窟の住居がつくられ、宗教弾圧が進むと身を隠すようにキリスト教徒が洞窟聖堂や洞窟修道院をつくりました。今ではギョレメ渓谷に約30の洞窟聖堂が残っています。現地では、気球に乗って上空から奇岩の群れを眺めるアクティビティが人気を集めています。
Subterranean city of Kaymakli / Kaymaklı Yeraltı Şehri
カイマクルの地下都市はデリンクユの地下都市の北側に位置し、軟らかい凝灰岩を掘り下げて築かれた地下都市で、住民の安全を確保するために建設されました。地下8階まであり、100本以上のトンネルで各部屋がつながっています。通路は狭く、低く、傾斜があるのが特徴で、これは外敵が侵入してきた時に移動を制限するためとされています。カイマクルはカッパドキアで最も広い地下都市とされており、多くの貯蔵室があったことが、多くの人たちが暮らしていたことを裏付けています。
Subterranean city of Derinkuyu / Derinkuyu Yeraltı Şehri
デリンクユの地下都市は、カイマクルと同様、軟らかい凝灰岩を掘り下げて築かれ、その深さは約85mにも及びます。一般的にビルの階層は1階層で高さ3~4mなので、21~28階建てのビルが埋まっている計算になり、その規模の大きさを実感できます。まるで蟻の巣のように張り巡らされている地下空間の各所には、内側から閉めることができる転がすことのできる大きな石の扉があり、また各階ごと封鎖することも可能となっており、侵略に対する備えがなされていました。

遺産DATA

保有国 : トルコ共和国
分類 : 複合遺産
登録年 : 1985年
登録基準 : (i) (iii) (v) (vii)
遺産の面積 : 98.8381㎢
座標 :N38 40 0.012 E34 51 0

アクセス

羽田などからトルコのイスタンブールを経由し、ネヴシェヒル・カッパドキア空港へ。空港からはカッパドキア中心地へは車で約40分。シャトルバスやタクシーを利用する。

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/MENSA会員

民間企業勤務のサラリーマンで、知識量よりも考え方の多様性を充実させることに重きを置く。暫定リスト入りを目指している「四国八十八箇所霊場と遍路道」で、お接待などで外国人やお遍路さんに遍路文化や世界遺産の魅力を伝える活動をライフワークにしている。趣味は辺境地の世界遺産巡り、世界遺産関連の書籍や手ぬぐいの収集、発酵食品作りなど。