クルチェット邸
街並みや両隣の建物との調和を強く意識して設計された(©xiquinhosilva/flickr/CC BY 2.0

「新しい時代の住まいのあり方」を表現した小さな傑作

1949~1953年にアルゼンチンのブエノスアイレス州ラ・プラタに建設されたクルチェット邸は、第二次世界大戦後の建築家ル・コルビュジエを代表する重要な作品です。この設計を依頼したのは、アルゼンチン人外科医のペドロ・ドミンゴ・クルチェットです。彼は優秀な医師であり、音楽・絵画・文学に造詣の深い教養人でもありました。クルチェットは外科クリニックを開業するにあたり、単に診療所付き住宅を求めるのではなく、「新しい時代の住まいのあり方」を表現できる建築家として、ル・コルビュジエに設計を依頼しました。敷地は小さいながらも公園に面した恵まれた場所で、この計画に魅力を感じたル・コルビュジエは、クルチェットに宛てた手紙の中で、「シンプルで、敷地や用途に適切に応えた、調和のある小さな傑作をつくる」と伝えています。

クルチェットの希望に応えたル・コルビュジエの建築原則

クルチェットは設計に際し、診療所と住宅を分けること、主要な部屋から隣接する公園を眺められるようにすることを希望しました。これに対してル・コルビュジエは、建物を柱で持ち上げる「ピロティ」を採用し、地上階にはガレージと必要最小限の設備のみを配置しました。建物前面の2階部分には診療所が置かれ、住宅部分は敷地の奥側に、診療所よりも高い位置に配置されています。ル・コルビュジエは、「まず建物の配置によって公園への眺望を確保し、屋上庭園としてのテラスを設けることで、光や風、日差しと日陰の豊かな環境を住空間に取り込んだ」と述べています。また、診療所と住宅の玄関はスロープで結ばれており、建物内を移動しながら連続的に空間を体験することができる「建築的プロムナード」の手法が取り入れられています。

執筆協力者PROFILE

高等学校教諭/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター

兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
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兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
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