ラ・ロッシュとジャンヌレ邸
ラ・ロッシュ邸は、緩やかなスロープをのぼりながら、少しずつ変化する空間の見え方を体験できるように構成されている(©Maryade/flickr/CC BY-ND 2.0

2棟続きの邸宅をひとつの建築作品に

1923年、建築家ル・コルビュジエによってフランスのパリ16区に設計された「ラ・ロッシュ邸とジャンヌレ邸」は、建築において近代に相応しい芸術を作ろうとする「ピュリスム」の運動を初めて表現した作品です。緑豊かな袋小路に建てられた2棟続きの邸宅は、ひとつの建築作品として設計されました。「ラ・ロッシュ邸」は、裕福な独身の美術収集家であり、スイスの銀行家でもあったラウル・ラ・ロッシュのために設計されました。独身者の住居であると同時に、近代絵画コレクションを展示するギャラリーとしての役割も担っていました。一方、「ジャンヌレ邸」は、ル・コルビュジエの兄であるアルベール・ジャンヌレ夫婦のために設計されました。3人の子どもを持つ家族のための住宅として、多くの部屋と生活に必要な設備が備えられています。

新しい試みに挑戦した近代建築のはじまり

ラ・ロッシュとジャンヌレ邸には、1926年にル・コルビュジエが提唱することになる「近代建築の五原則」の基礎を見ることができます。新しい建材である鉄筋コンクリートを用い、建物の1階部分の柱で建物を支え、1階部分に吹き抜け空間をつくる「ピロティ」、水平な屋上により可能となる「屋上庭園」、間仕切り壁により可能となった「自由な平面設計」、壁面に横長の窓を設置して室内空間を作る「水平連続窓」、様式にこだわらない自由なデザインを可能とする「自由なファサード」の要素が建物に取り入れられました。さらに、ラ・ロッシュ邸には、建物の中を歩いて空間を鑑賞する「建築的プロムナード」という新しい技法が実践されています。また、当時としては珍しかった色彩計画も空間づくりに活かされ、玄関ホールと居間は単色でまとめられ、一方でギャラリー、図書室、寝室、そして1階の付属室には多彩な色彩が用いられています。これらは、絵画と建築とを結びつけようとする、建築家ル・コルビュジエの新しい試みへの挑戦だったのです。

執筆協力者PROFILE

高等学校教諭/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター

兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
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兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
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