詩人や歴史家たちが讃えた白く輝く霊廟
タージ・マハルは、ムガル帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーンが、亡き妻ムムターズ・マハルのために古都アーグラに建設した霊廟です。皇帝の建築と芸術への強いこだわりを象徴する建物で、中心軸から左右対称に広がる構造や、新しい柱のデザイン、曲線的なフォルム、そして植物をモチーフにした自然主義的な装飾などは、すべて、シャー・ジャハーン様式の特徴です。なかでも、その中心にある霊廟は、ラジャスタン州マクラナ産の白大理石で覆われています。白亜の輝きを放つ霊廟の美しさを、詩人や歴史家たちは、「タージ・マハルは天国にある愛妃ムムターズ・マハルの邸宅を地上に再現したものだ」「見る者に天界へ昇りたいという願望を忘れさせるほど、ここは光り輝く墓である」と評しています。この庭園付きの邸宅を可能な限り忠実に実現するために、従来の霊廟建築のように、霊廟を十字形に配置された庭園(チャハル・バーグ)の中心に建てるという手法は取られませんでした。代わりに、当時、アーグラで主流となっていた、川に面する庭園様式が採用されています。こうしてタージ・マハルは、邸宅と霊廟という二つの機能を見事に調和させたのです。

外観はペルシア、内部はヒンドゥー、全体はイスラム
霊廟の建設は、1632年から22年の歳月をかけて完成しました。ガンジス川の支流であるヤムナー川の南岸に位置し、広さ17万㎡の長方形の敷地に建てられています。総白大理石のドーム型をした霊廟は、高さ5.5mの基壇の上に幅65m、高さ58mの変形八角形の廟本体が鎮座し、その前後左右4面にイーワーンと呼ばれる開放式のホールがあり、ペルシア建築の影響も見られます。さらに基壇の四隅には、イスラム教のモスクに見られる高さ43mのミナレットが4本立っています。壮大な中央ドームは、外側が高さ44.4m、内側が高さ24.35mの二重ドームの構造です。これは、オスマン帝国にも仕えたトルコ出身のイスマイル・アファンディが設計したと言われています。また、ヒンドゥー教とイスラム教の建築様式が融合した特徴として、ドーム基部の四隅には、典型的なヒンドゥー教の傘型の屋根を持つ東屋(チャトリ)が配置されています。内部中央ホールは8つの部屋に囲まれており、それぞれの部屋は廊下で繋がっています。そこには静謐な雰囲気が漂い、半透明の窓から差し込む薄暗い陽光が、霊廟をいっそう荘厳な空間にしています。

妻に寄り添うように安置された夫の棺
徹底した左右対称で建てられたタージ・マハルの中で、その原則が破られた場所が霊廟内部の墓所です。先に亡くなったムムターズ・マハルの棺が中央に安置され、その後、亡くなったシャー・ジャハーンの棺がその隣に安置されたためです。シャー・ジャハーンの墓碑にはインク壺が、妻ムムターズ・マハルの墓碑には石板が置かれています。これは、「男が女の心に自分の願いを書き記す」という古い言い伝えに基づいたものです。それぞれの墓碑には聖典クルアーン(コーラン)の一節が刻まれ、東洋風のデザインが施された精巧な大理石の格子状の透かし彫りの間仕切りで囲まれています。実際の墓は、墓碑の真下にある地下室に安置されています。現在は非公開となっているムムターズ・マハルの墓には、かつて宝石で満たされた鉢や床に敷かれたペルシア絨毯、銀の扉や吊り下げられたシャンデリアなどが飾られていました。また、墓所に施されたユリやチューリップ、アヤメといった死や悼みを象徴する花々が彫刻された石板には、35種類もの宝石が象嵌されていると言われています。
執筆協力者PROFILE
兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
≫世界遺産の執筆記事一覧
≫構成資産・みどころの執筆記事一覧
執筆協力者PROFILE
兵庫県出身。中学3年生の夏休みの台湾ひとり旅をきっかけに、旅行先の歴史・景色・料理など、世界を知る魅力のとりこになる。「世界遺産を学習して見て感動して」をモットーに活動。全国通訳案内士の資格も有し、日本の魅力も発信している。
≫世界遺産の執筆記事一覧
≫構成資産・みどころの執筆記事一覧