フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築
代表作であるニューヨークのグッゲンハイム美術館はフランク・ロイド・ライトが91歳で亡くなった後に完成した

遺産DATA

地域 : 北米 保有国 : アメリカ合衆国 分類 : 文化遺産 登録年 : 2019年 登録基準 : (ii) 遺産の面積 : 0.25723㎢ バッファ・ゾーン : 7.10103㎢ 座標 : N39 54 20.055 W79 27 59.3

about

有機的建築の概念をはっきりと示す建築の形

アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトが20世紀前半に設計したアメリカ国内の8つの建築物が、世界遺産に登録されています。これら8つの建築物は、1906〜1909年に建造されたユニティーテンプルから、1956〜1959年に建造されたソロモン・R・グッゲンハイム美術館まで、ライトの70年にわたるキャリアの中の約50年間の代表作です。これらの建築物は、彼が提唱した「有機的建築」の概念を明確に示しています。「有機的建築」とは、「オープン・プラン(流動的な設計)」や「建築空間の内外の曖昧な境界」、「鉄やコンクリートなどの素材の斬新な組み合わせ」といった特徴を持つ建築スタイルです。彼が確立した、水平ラインを強調するプレイリースタイル(草原様式)は、その好例と言えます。

ヨーロッパに多大な影響を及ぼしたアメリカの建築

ライトの建築群には、機能的かつ情緒的な要求に応えるために、幾何学的な抽象性と巧みな空間使いが取り入れられており、自然の造形や原理に基づいて設計されています。彼は世界中のさまざまな文化や伝統から影響を受けながらも、従来の建築様式を打ち破り、現代の生活にふさわしい新しい建築スタイルを生み出しました。これらの建築は、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパにおける近代建築運動にも大きな影響を与え、20世紀の近代建築デザインの発展に重要な役割を果たしたことも高く評価されています。

 

アクセス

ユニティーテンプル:オークパーク駅から徒歩約5分。フレデリック・C・ロビー邸:59ストリート駅から徒歩約10分。 ホリーホック邸:バーモント/サンセット駅から徒歩約10分。 落水荘:ピッツバーグから車で約2時間。 ソロモン・R・グッゲンハイム美術館:86ストリート駅から徒歩約10分。

執筆協力者PROFILE

アレセイア湘南高等学校教諭/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。

Properties

Unity Temple
1905年に設計され、1906~1909年にかけて建設されたユニティーテンプルは、シカゴ郊外のオークパークにあるユニティー・テンプル・ユニテリアン・ユニバーサリスト教会の本拠地です。この建物の建設では、一体型の鉄筋コンクリートを用いることによって、ダイナミックな空間を創り出すことに成功しています。建物は2つの立方体状の構造物から成り立っており、入口ドアのあるホワイエ(広間)で繋がっています。北側の建造物は講堂兼礼拝堂としての役割を果たしています。
Frederick C. Robie House
1908年に設計され、1910年に完成したフレデリック・C・ロビー邸は、シカゴのハイドパーク地区にあるシカゴ大学のキャンパス内に位置しています。3階建てで、建物全体の面積が約836㎡あるこの住宅は、全体的に水平方向のフォルムが特徴的です。黄褐色から赤褐色のローマレンガで造られた細長い部屋と機能的なエリアが、石材で装飾された低い寄棟屋根(よせむねやね)の下に配置されています。フレデリック・C・ロビーは自転車やミシンの製造で成功した実業家で、耐火性と最先端の設備、そしてお手頃な価格を兼ね備えた住宅を求めていました。
Taliesin
ウィスコンシン州スプリンググリーンにあるタリアセンは、フランク・ロイド・ライトの住居兼スタジオとして1911年に設計され、1911年から1959年にかけて建設および改築が行われました。1938年からはアリゾナ州に冬季用の第二の住居兼スタジオとしてタリアセン・ウェストが建設されましたが、こちらのタリアセンはその後もライトの夏の住居兼スタジオであり続けました。2度の大火災に見舞われたものの、その後に再建・拡張され、ライト自身の指揮のもとで半世紀以上にわたって発展を続けました。
Hollyhock House
1918年に設計され、1918~1921年にかけて建造されたホリーホック邸は、カリフォルニア州ロサンゼルスのハリウッド地区東端、オリーブ・ヒルの頂上に位置しています。中庭を中心に建てられたこの邸宅は、野外と屋内の生活空間がシームレスに融合しているのが特徴です。地上階と屋上階の両方にテラスが設けられており、それぞれの部屋から野外空間へとつながる造りになっています。建物自体は立方体の形状をしており、漆喰で覆われた壁は中央アメリカの先住民建築を彷彿とさせ、まるで一枚岩のような圧倒的な存在感を放っています。また、様式化された立葵(ホリーホック)をかたどった鋳造コンクリートの装飾が、帯状の装飾の上に美しく配されています。このホリーホック邸は、地元にあるスペイン風パティオハウスの伝統を独自に取り入れながら、古代アメリカ先住民マヤ族の様式や、周囲の景観の象徴的な表現を見事に融合させた建築となっています。
Fallingwater
落水荘はペンシルベニア州南西部、アレゲーニー山脈のミルラン村から南へ約6.5㎞の地点に位置しています。標高が高く、深い渓谷と数多くの滝が点在しており、多様な植物や野生動物が生息しています。エドガー・カウフマンとリリアン・カウフマン夫妻の週末の別荘として1935年に設計され、1936年から1939年にかけて建設されました。1937年に完成した本館は3階建てで、敷地内を流れるベアラン川の上流の滝の上に建てられています。各階には広々としたテラスが設けられ、地元の砂岩でできた巨大な煙突が、建物全体の印象を支えています。そのため、敷地内はもちろんのこと、建物内部にまで水の音が心地よく響き渡ります。
Herbert and Katherine Jacobs House
ハーバート・キャサリン・ジェイコブス邸は、1936年に設計され、1936年から1937年にかけてウィスコンシン州マディソンに建設された邸宅です。この邸宅は、ライトが提唱した「ユーソニアン住宅」の最初の作品として知られています。「ユーソニア」とは、フランク・ロイド・ライトが平均的なアメリカ人のための建築ビジョンを表現するために用いた言葉です。ユーソニアン住宅は、使用人を雇わない一般的な家族向けに、コンパクトかつ質素に設計された平屋建ての住宅で、庭を囲むようなL字型の配置が特徴です。これにより、室内の空間と野外の庭が視覚的に強く結びつけられており、これこそがユーソニアン住宅の大きな魅力となっています。
Taliesin West
1938年に設計・建造されたタリアセン・ウエストは、アリゾナ州スコッツデールに位置しています。ここはフランク・ロイド・ライトが晩年の20年間を過ごした冬の住居であり、同時に弟子たちのスタジオでもありました。砂漠の中に佇む半透明の屋根を持った恒久的な建造物群は、建物と周囲の景観が新たな形で融合した姿を示しています。アリゾナ州をはじめとするアメリカ南西部の砂漠地帯において、タリアセン・ウエストは、その土地の風土に根差した革新的かつ新たな建築形態を確立しました。
Solomon R.Guggenheim Museum
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館は、1943年に設計され、1956年から1959年にかけて建造されました。ニューヨークのセントラルパークに面して建つこの美術館は、製鉄業で財を成したソロモン・R・グッゲンハイムの収集品を展示するために造られたものです。館内には印象派や後期印象派、モダンアート、現代美術を中心に、およそ2.500点もの作品が収蔵されています。建物は鉄筋コンクリート造で、主に3つの要素で構成されています。敷地の南側にある螺旋状のメインギャラリー「ロタンダ」、北側にある小ぶりな円形の管理棟「モニター」、そしてこれら2つの棟を繋ぐ水平な片持ち梁(かたもちばり)構造の橋です。この橋は建物の南側、西側、北側の2階部分を囲むように伸びています。なかでもロタンダは、カタツムリの殻のような螺旋状の外観で広く知られています。

遺産DATA

地域 : 北米
分類 : 文化遺産
登録年 : 2019年
登録基準 : (ii)
遺産の面積 : 0.25723㎢
バッファ・ゾーン : 7.10103㎢
座標 :N39 54 20.055 W79 27 59.3

アクセス

ユニティーテンプル:オークパーク駅から徒歩約5分。フレデリック・C・ロビー邸:59ストリート駅から徒歩約10分。 ホリーホック邸:バーモント/サンセット駅から徒歩約10分。 落水荘:ピッツバーグから車で約2時間。 ソロモン・R・グッゲンハイム美術館:86ストリート駅から徒歩約10分。

執筆協力者PROFILE

アレセイア湘南高等学校教諭/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。